
石油会社が育てるブランドきくらげ「さぬきくらげ」。その意外な組み合わせに惹かれて訪ねてみると、肉厚ぷるぷるの食感へのこだわりや、放置竹林を活用した新たな挑戦など、思わず応援したくなるストーリーがありました。
「石油会社が、きくらげ?」
そんな意外な組み合わせから始まった、高橋石油株式会社の新たな挑戦。三木町でブランドきくらげ「さぬきくらげ」を育てるだけでなく、放置竹林を活用した「さぬきメンマ」の開発や、竹・菌床・カブトムシへとつながる循環型農業にも取り組んでいます。
今回は栽培ハウスを訪れ、同社の新規事業開発を担当する池田さん、生産責任者の吉岡さんに、ものづくりへのこだわりと、その先に描く未来についてお話を伺いました。
「量」ではなく「価値」を育てる

ハウスに入ってまず目を引いたのは、大きく育った生きくらげ。
一般的にイメージする黒いきくらげとは少し違い、どこか茶色みを帯びた肉厚な姿が印象的です。
――まず、「さぬきくらげ」について教えてください。
池田さん「実は、日本で流通しているきくらげの95~99%は中国産で、国産はほんのわずかしかありません。私たちは三木町のハウスで一年を通して『さぬきくらげ』を栽培しています。年間の生産量は約20トン。決して大量生産ではありませんが、その分、品質には徹底してこだわっています。」
「石油会社なのに、なぜきくらげ?」
そう思った人も多いかもしれません。
石油やLPガスの供給、ガソリンスタンドなどの事業を手掛ける高橋石油では、2015年に「食も人を支えるエネルギーの一つ」という考えから、きくらげ事業をスタートしました。現在では、エネルギー事業と並ぶ新たな挑戦としてブランドづくりを進めているそうです。
――池田さんは新規事業開発を担当されているそうですね。
池田さん「市場を調べると、きくらげそのものの需要は十分ありました。一方で、生産量を急激に増やすことは簡単ではありません。そこで考えたのが、量ではなく価値を高めるということでした。きくらげそのもののおいしさを伝えることはもちろん、新しい商品づくりやブランドづくりにも力を入れています。」

ハウスの中には、びっしりと並ぶ菌床。
ここで温度や湿度、水分量を細かく管理しながら、一年を通してきくらげを育てています。
――吉岡さんが一番こだわっていることは?
吉岡さん「やっぱり食感ですね。きくらげは、水・酸素・適度な温度があれば育ちます。一般的には直接水をかけて育てる方法もありますが、水分を吸いすぎると柔らかく、水っぽい食感になりやすいんです。
うちは湿度や水分量を細かくコントロールしながら、じっくり育てています。だから肉厚で歯ごたえのあるきくらげになるんです。
乾燥すると裏側が白くなる『裏白』という特徴もあり、長時間煮込んでも食感が残りやすいのも特徴です。『食べたら違いが分かる』と言ってくださるお客様も多いですね。」
※生産責任者の吉岡さん
おすすめの食べ方は意外にも天ぷら。揚げることで、この肉厚な食感がより際立つそうです。
実際に高松市内のお寿司屋さんでも提供されており、「きくらげのイメージが変わりますよ」と笑顔で話してくれました。
きくらげから始まる地域循環

県内でも問題になっている放置竹林。
人の手が入らなくなった竹林は竹が密集し、倒れた竹が折り重なることで森林環境にも影響を及ぼすなど、全国各地で課題となっています。
――その放置竹林に着目したのが「さぬきメンマ」なんですね。
池田さん「そうです。福岡県糸島市で国産メンマに取り組む方とのご縁があり、放置竹林の現状や、幼竹をメンマとして活用する取り組みを知りました。香川県でも同じ課題があります。そこで春に伸びる幼竹を収穫し、『さぬきメンマ』として商品化することで、竹林整備と地域資源の有効活用を同時に進められると考えました。」
現在は「讃岐味謹製」ブランドとして、県内のお土産店やホテルなどで販売されています。

現在は、生きくらげや乾燥きくらげだけでなく、きくらげ入りうどん、佃煮など、さまざまな商品を展開しています。

一般的なきくらげの佃煮は乾燥きくらげを戻して作ることがほとんどですが、こちらは収穫した生きくらげをそのまま小豆島へ運び、新鮮な状態で炊き上げています。だからコリコリではなく、ぷるぷるとした食感になるそうです。
今後は、放置竹林を整備して伐採した竹を粉砕し、きくらげの菌床へ活用。さらに役目を終えた菌床はカブトムシの飼育に、幼竹の皮や節は牛の飼料へと、一つの資源を無駄なく循環させる仕組みづくりも進めています。
きくらげづくりから始まった取り組みは、やがて地域資源が循環する未来へと広がろうとしています。
実際に食べてみたら、きくらげのイメージが変わった!

取材後にいただいた「きくらげの佃煮」を、自宅でさっそく食べてみました。
きくらげといえば、中華料理などで味わうコリコリとした食感を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。ところが、一口食べて驚きました。
肉厚でぷるぷる!
噛むたびに心地よい弾力があり、これまで食べてきたきくらげとはまるで別物です。一般的な乾燥きくらげを戻したものでは味わえない、生きくらげならではの瑞々しさと存在感があり、ご飯との相性も抜群でした。
普通のきくらげの佃煮と、この生きくらげの佃煮が店頭に並んでたら、断然生きくらげを買う!
「さぬきメンマ」も気になるという人には8月1日発売予定の「さぬきくらげメンマ」もおすすめ。
こちらは佃煮ではなく、讃岐うどんのかけ出汁で炊き込んだものですが、ピリ辛でビールのお供にぴったりです。よくあるメンマのような特有の臭みがないので、メンマが苦手な人にもおすすめできます。

石油会社から始まった挑戦は、地域課題の解決だけでなく、「また食べたい」と思わせるおいしさにもつながっていました。
お土産店などで「さぬきくらげ」や「讃岐味謹製」の商品を見かけたら、ぜひ一度手に取ってみてください。きっと、これまで抱いていたきくらげのイメージが変わると思いますよ~!
【販売情報】
■「さぬきくらげ」(生・乾燥)
マルナカ産直市場
エブリイ各店
DCM上福岡店 など
■「讃岐味謹製」(さぬきメンマ・生きくらげ佃煮など)
TAKAMATSU ORNE「ハレノヒヤ」
四国ショップ88
栗林庵
久本酒店
高松三越「四国日和」
琴参閣
道の駅 源平の里むれ
中野うどん学校
ほか、ECサイトでも販売中
