人気企画の3回目は、新しい視点で企業と求職者をつなぐ「Tryce(トライス)」の共同代表・篠原啓祐さんにインタビューしました。
高松市にあるコワーキングスペース「Setouchi-i-Bace」さんを舞台にして、そこに集まる面白いフリーランスの方を中心にインタビューするこのシリーズ。
起業を考えている人、興味を持っている人が結構いるようで、第1回、2回ともかなりのアクセスを集めました。
そして、今回は「香川ビジネス&パブリックコンペ2020」のビジネス部門でグランプリを獲得したというビジネスモデルについていろいろお聞きしたので、ぜひご覧ください!
きっかけは、求人募集に苦労する顧客企業の悩みからだった。
今回お話をお聞きしたのは、鹿児島県出身で政府系金融機関に務める篠原啓祐さん。東京や福岡などの国内各所やベトナムでの海外勤務を経て、現在は四国の創業・ベンチャー企業への融資を担当されています。
そんな篠原さんがなぜ「香川ビジネス&パブリックコンペ2020」に応募したのか? なぜ求人という分野に着目したのか? など、興味は尽きないのでいろいろ伺ってみたいと思います。
ーー今日はよろしくお願いします。さっそくですが、現在共同代表をされている「Tryce(トライス)」さんについて教えていただけますか?
篠原さん「はい。我々Tryceは、香川大学院地域マネジメント研究科の学生2名で立ち上げた、中小企業で働く魅力を発信し、働きがいを求める求職者と中小企業をつなぐプラットフォームです。」
ーーえっ? 篠原さん自身も学生さんなんですか?
篠原さん「実はそうなんです。中小企業の様々なコンサルティングに役立てたいと、会社に務めながら香川大学院でMBAの勉強をしています。」
すげーっ! 僕なんかと頭のデキがまったく違う…
中小企業に対するコンサルティングについては追々お聞きするとして、もっとも気になるこのあたりのお話しから。
ーーそもそも、なぜ求人広告という分野でビジネスモデルを思いつかれたんですか?
篠原さん「勤め先である政府系金融機関で普段は中小企業様向けの融資などの仕事をしているのですが、いろんなご相談の中で募集はかけるけど、なかなか人材が集まらないという悩みすごく多いんですね。僕から見るとすごく魅力的な企業なのになぜ? という疑問があって、いろいろお聞きすると、率直な感想として企業の本当の魅力が求職者に発信できていないんじゃないかと思うようになりました。」
本誌ガーカガワでも求人がらみで企業さんに突撃取材するみたいな企画も何度か行ったのですが、そのきっかけは既存のテンプレート化した求人広告では本当の魅力が伝わらないだろうなと思った事なので、そのあたりの感覚はすごく分かります。
単にマッチングの機会損失だけじゃなく、お互いよく知らないまま入社されると長続きしないという問題もありそうです。
篠原さん「求人広告を扱っている社長さんともお話しする機会があったのですが、求人サイトや職業紹介所などは年々増えているのに、それに反して実際のマッチング率は下がっているんですよね。多くの求人を扱う既存のやり方だとどうしても定型のものになってしまいますし、個別の魅力を深く伝えるためのマンパワーもコストもかけられないというのが現状だと思います。」
コンサルティングにより企業の魅力を引き出し、多くの求職者に働きがいを伝えたい。
ーーなるほど。そこから「香川ビジネス&パブリックコンペ2020」へとつながったのだと思いますが、応募されていかがでしたか?
篠原さん「思いついたら即行動するタチなので、実は応募自体も深く考えずにクラスメイトを誘って応募したという感じです。でも、今まで頭の中でボヤっと考えていたものを形にする作業は意外と楽しくて、たまたまグランプリをいただいた事で自信にもなりました。ビジコンに出席された企業の方からぜひやってほしいという声もあり、背中を押されたというのもありますね。」
ーービジネスモデルとしてゼロから作り出すご苦労もあったのでは?
篠原さん「ほんと、なにもないところから0を1に作り上げる大変さは本当に感じました。応援はしてくれるけど人はなかなか助けてはくれないので、すべて自分たちでやらなければいけない。ベンチャーの経営者って本当に孤独なんだという事が今回ビジコンに応募したことでよく分かりました。
でも、そういうベンチャーの社長の気持ちが分かった事も収穫ですね。コンサルティングを行う上でも社長の気持ちが分かる事は大きなアドバンテージになると思います。」
ーー先ほどからコンサルティングというキーワードが出ていますが、中小企業の魅力を伝えるという部分でアドバイスを行ったりという事でしょうか?
篠原さん「大企業と同じ土俵に立っても中小企業はどうしても不利ですよね。給与や待遇面でアピールするのではなく、やりがいや働きがいを感じる人材にターゲットを絞って訴求する事が必要だと思います。また、経営者自身も短期的な労働力としての求人になりがちなので、もっと長期的に、採用した人をどう育てるのかという観点から提案する必要性も感じます。
例えば経営理念を聞いてもズレた回答になる経営者もいたり、会社としての魅力をどう伝えるのか、どう伝える材料を整えるのか、そもそもの環境から定めていただく事も必要。実際にその会社と関わると、いろんな魅力を感じるとともに、問題点や課題も見えてくるので、やはりコンサルティングはひとつのポイントになると思いますね。」
ーーコンサルティングにより会社の魅力を引き出し、求職者に発信するという事ですね。具体的にはどのような活動をイメージされていますか?
篠原さん「いろんな切り口があると思いますが、まずは社長の思いやビジョン、会社の技術力にフォーカスする。また、あえてその会社で働くことによる大変なところも出しつつ、やりがいが感じられる記事を配信したいですね。
去年の8月頃からホームページ開設し1社紹介したところ、たまたまなのか1名の採用が決まり、手ごたえを感じました。現在、2社目3社目に取り組んでいるところです。
また、ホームページに掲載して終わりだと効果測定が出来ないので、求職者が実際に会社に訪問し、会社の課題解決などを話し合うワークショップなども開きたいですね。」
ーー現在はまだいろいろ模索しながらという印象ですが、今後に向けてはいかがでしょう?
篠原さん「今後はいろんな経営者の方たちとお会いしてビジネスにつなげていきたいですね。
求職者の人向けには課題解決のためのワークショップなども開催したいですし、求職者に対して中小企業の大企業と違った魅力を発信していきたいと思っています。
ただ、政府系金融機関なので副業はできないんですよね。今回ビジコンに共同で携わった大学院生をサポートする形で携わっていきます。」
アイディアの壁打ちでモチベーションを上げてくれるSetouchi-i-Baseのコーディネーター
取材に同席していただいたコーディネーターの夛田(ただ)さんに少し話を振ってみたいと思います。
ーー夛田さんは、コーディネーターとして篠原さんにどのようなサポートをされていますか?
夛田さん「篠原さんとはアイディアの壁打ちをやったり、コンテストなどのプレゼンをどうやればいいのかというアドバイスが主ですね。僕がデザイナーとして活動している事もあるので、プレゼンの資料やスライドなどのノウハウをお伝えして、より良いものになるようかかわっています。」
篠原さん「壁打ちする時って、プロの人に壁打ちすると辛い答えしか返ってこないですよね。ダメ出しばかりじゃなくてテンション上げさせてくれよみたいな(笑)
夛田さんはいい意味でプロらしくないというか、専門的な事はきちんとアドバイスをくれますがダメ出ししない、いい塩梅で出してくれるのが有難い。次頑張りたいとモチベーションあがりますよね。ボコボコに言われると二度と相談するするかってなりますから(笑)」
ーー篠原さんがSetouchi-i-Baseを利用する理由は、アイディアを整理したい、形にしたい。そういう場としての価値でしょうか?
篠原さん「そうですね。会社から近いという事もありますが、いろんなコーディネーターさんともお話しできてすごく居心地がいいですよね。」
僕も求人広告関連については本誌でも取り上げている関係でいろいろ苦労話しは耳に入ってくるのですが、良い人材を採用したいけど、求人に対する予算はあまりさけないのが中小企業の悩みどころだと思います。
結果的に低コストの求人広告に頼るしか術はなく、定型的な求人広告だとなかなか良い人材が集まらないというジレンマだと思います。
また、求職者にとっても本当の企業の魅力や働きがいを感じるだけの求人広告は少ないので、求人に応募する不安や実際に就職した後の姿が思い描けないという不満もあると思います。
単に給料や待遇面などの定型の形ではなく、コンサルティングにより企業の魅力を引き出し、わかりやすく伝える篠原さんの取り組みはますますクローズアップされるのではないかと感じました。
求人にお悩みの中小企業の皆さん、一度篠原さんにご相談されてみてはいかがでしょうか?
⇒ Tryce公式サイト
⇒ Setouchi-i-Base公式サイト