先月1月に「香川のJKギタリスト 馬場美夕がいきなりヒットチャート3位!夢は大きく海外」というタイトルで香川の高校生ギタリスト・馬場美夕さんのインタビュー記事を書かせていただきました。
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この記事が思いのほか反響があって、馬場美夕さんの記事をもっと書いてほしいといったリアルな声や、美夕さんからは曲のダウンロード数がさらに増えたという嬉しいご報告もあったりで、読者の皆さんには本当に感謝で一杯です。
そんな中、記事を読まれたある方より「私の知り合いの漆芸家さんが漆塗りのギターを展示しているので、ぜひ馬場美夕さんに弾いてもらいたい」という連絡が。ご両親を通じて美夕さんにお知らせしたところ、ぜひ弾いてみたいとの返事が来ましたので、急遽セッティングをしていただいて今回の企画となりました。
場所は北浜アリーの大運組本社ビル2階にあるギャラリー。こちらで開催されている「さぬきうるし Sinra」さんの展示会会場です。(※展示会は1月30日に終了しています。)
小学生のころからスーパーキッズと呼ばれ、成長とともにその活動範囲を広げる高校生ギタリスト・馬場美夕さんと、江戸時代後期から続く香川の伝統工芸・讃岐漆芸。ただ普通に活動していたらなかなか交わることがないであろう両者のコラボは個人的にもかなり興味があります。
果たしてまったく違う世界の文化が融合することでどんな音色を奏でるのか… ぜひご覧いただければと思います。
「作り手」と「使い手」を繋げたい。さぬきうるし Sinra
讃岐漆芸は、江戸時代後期に登場した玉楮象谷(たまかじぞうこく)によって始められ、その流れを組む香川漆器には蒟醤(きんま)、存清(ぞんせい)、彫漆(ちょうしつ)、後藤塗(ごとうぬり)、象谷塗(ぞうこくぬり)の技法があり、その五技法は国の伝統的工芸品に指定されています。
今回展示会を行われている「さぬきうるし Sinra」さんも讃岐漆芸を継承し、次世代にその工芸文化を繋げていくべく活動されており、「作り手」と「使い手」を繋げたいという思いで、毎日使いやすいものであること、長く使い続けられる丈夫さがあること、本物の素材を使うこと、この3つを大切にして漆器を製作されているそうです。
漆器には美術品という側面もありますが、展示されている漆器を眺めていると、ちょっと特別な日に食卓に並べて普通に使ってみたいと思うような温かみのあるものばかり。作り手の方には失礼なのかもしれないけど、道具としての美しさを感じました。
そんな中、さらになんとも言えない存在感を示しているのがこちらのギター。そう、馬場美夕さんが今回弾くことになっている漆塗りのギターが展示されていました。
間近で見ると、さらに漆の深みのある質感が美しい。
漆の美しさを出しながら良い音を出すために何回塗ればいいのか、また、蒟醤(きんま)という技法で模様を彫っていく中でギターの複雑な形状が難しかったという職人技が光る作品です。
益々どんな音が出るのか興味が湧いてきました。何よりギターが好きという馬場美夕さんも緊張の面持ちながらもはやる気持ちを抑えられない様子なので、さっそく弾いてもらうことにしましょう。
ずっしりとした重さ、そして重厚でしっかりとした音! さっそく弾いてみた。
そして始まった馬場美夕さんの演奏会。約1時間ほど即興でいろんな曲を弾いていただきました。
途中の曲では、漆塗りのキツネのお面を被って演奏するひと幕も。文字ではその音色をお伝えできないのが非常に残念なのですが、素人目(耳?)ながら、漆を塗っていることでのマイナス点はまったく感じられないどころか、むしろ音の厚みが増したような気さえしてきます。
会場には地元テレビ局や新聞社などの報道陣も詰めかけ、熱心に演奏に耳を傾けていました。
ひととおり演奏が終わったところで、馬場美夕さんと、漆塗りのギターを制作した「さぬきうるし Sinra」の代表で漆芸家の松本光太さんにお話を伺いました。
ーー今回の漆塗りのギターですが、どういった経緯で制作されたのでしょうか?
松本さん「実は僕の同級生が音楽をやっていて、そこから広がった音楽の知り合いがすごく増えたことで、漆と音楽を融合できないかと考えた時に、まずはギターから作ってみようと盛り上がりました。漆塗りのギターが今までなかったわけじゃないのですが、ちゃんと弾けて音が出て、いろんな人に弾いてもらえるものが見当たらなかったんですね。」
ーーそして、その漆塗りのギターを実際に手にして、弾いてみた感想はいかがですか?
馬場さん「持った瞬間、ずしっと重さがくるような感じでした! とっても素敵な音色で、弾いていてとっても楽しかったです。松本さんの作品への思いが、音を通じて感じることができました。」
ーー馬場美夕さんの演奏を熱心に聴かれていましたが、いかがでしたか?
松本さん「もう最高でしたね! 体が自然に揺れるというか、リズムにのるというか、本当にいいものを聴かせていただいたなというのと、自分が作った作品が『こういう音色を出すのか!』と感じられたことが非常に嬉しかったですね。」
その後お互いに感想を述べあったりしながら談笑する美夕さんと松本さん。作り手と使い手の思いが通じたのか、とってもほのぼのとした雰囲気でした。
松本さん「伝統というものは大切に守っていかないといけないものだとは思いますが、現代に合わせた漆器が現れてもいいんじゃないかとも思います。今回は、そういった可能性の広がりを感じられて本当に良かったです。」
美夕さんも演奏を終えてほっとした様子。実は、今回の企画をお伝えした時にそんな貴重なギターに傷を付けたりしたらどうしようとか、漆芸家さんが演奏を気に入ってくれなかったらどうしようとか、いろんな心配事もあったと言いますが、そんななか素晴らしい演奏をやりきった美夕さんのプロ意識も大したもんだと思いました。
ほっとしたら急に普通の高校生に戻ってしまった美夕さん。会場にある、来場者向けの絵馬になにやら願い事を書いている様子。
一体どんな願い事を書いているのかな?
って、告知かいっ!(笑)
馬場美夕さんの新曲「White Out」は、先ごろチャートインした曲「Blue moment」を提供された作曲家・有木竜郎さんがふたたび提供してくれたものなんだそうです。僕もさっそく聴いてみましたが、「Blue moment」とはまた違った感じのカッコイイ曲。なんだかドラマやアニメのオープニングに使われそうな、そう、体から翼が生えて空高く飛んでいきそうなイメージの曲でした。これもいい!
すでに配信されているので、Apple Musicからダウンロードしてぜひ聴いてみてくださいね!
~ おまけ ~
せっかく北浜アリーまで来たので、香川大学 Kitahma Lab の学生さんが運営している「きたはま案内所」にちょこっと遊びに行きました。北浜アリーのあれこれがここに来ればよく分かりますので、ぜひお立ち寄りくださいね!
おしまい。
馬場美夕(ばば みゆ)/ Twitter @miyuguitars
さぬきうるし Sinra / Instagram @sinra_sanukiurushi