
若者たちがチームを組み、「理想とするまちづくり」や「地域課題」などについて政策アイデアを提案する「たかまつ政策アイデアコンテスト2025」。これは高松市が主催するもので、若者がこれらを政策アイデアとして提案することで、若者の本市への理解を深め、愛着を醸成することなどを目的としています。
そして、高校生2チーム、高専生1チーム、大学生1チーム(ほか、出場辞退1チーム)が参加するコンテスト決勝が、1月24日、高松シンボルタワー内BBスクエアで開催されました。

果たして、高松市に関心が高い若者たちはどのような事に問題意識を持ち、より良い街にしていくためにどんな政策アイディアを提案してくれたのでしょうか?
コンテスト決勝にお邪魔したので、それぞれのプレゼンの要点と、イベントの様子などをレポートします。
なお、プレゼンの持ち時間はそれぞれ10分間。各プレゼンの後には高松市の大西市長、香川大学大学院地域マネジメント研究科の原教授など5名の審査員による質疑応答、すべてのプレゼン終了後に審査ののち結果発表という流れです。
ソッコー避難所ゲッター(香川高専 建設環境工学科)

トップバッターは香川高等専門学校 建設環境工学科の皆さんで、アクアゲッターという雨水貯留側溝を活用した避難所防災対策についてです。
きっかけは、西日本豪雨の際に避難所が浸水し、使用できなくなった事例を見たことだそう。近年の集中豪雨は災害レベルになっていることを鑑み、高松市でも避難所周辺の浸水対策を施す必要があるという提案です。

具体的には、雨水貯留・浸透機能を持つことで各地で導入実績のあるアクアゲッター(技術提供:日本興業)を、学校や公民館などが指定されている避難所周辺の歩道下に設置。一時貯留機能を持つ透水構造に改良することで、避難所利用者を浸水被害から守ることを目的としています。
利点としては、導入実績により技術的根拠があること、大規模下水工事より安価であること、検証しながら段階的導入が可能なことなど。共同研究で得た技術を机上で終わらせず、人の命を守る政策として実現したいという思いも語ってくれました。

プレゼンの後の質疑応答では、着眼点の良さなどは評価しつつも、政策実行時の関わり方や、予算規模の概算など、かなり突っ込んだ質疑などもありました。


驚いたのは職者の大人たちが、これは以下に紹介するすべての参加者に対してもそうなのですが、言葉は温かいけど内容的にはかなり鋭い指摘を行っている事。単なるコンテストだと思っていたのに、審査側は本気で高松市の政策として可否判断をされているようです。
若者たちが本気で準備し、提案したものだから、審査する大人たちも本気で受け止めるといった、とても良いコンテストだと思いました。
子どもと外国人が触れ合えるイベントの開催(えいめー太郎ズ)

続いて漫才かコントのような楽しいノリでプレゼンを始めたのが、えいめー太郎ズの皆さん。提案内容は、子どもと外国人の不安や孤立感を解消し、双方が過ごしやすくするために、子どもと外国人が触れ合えるイベントの開催です。
まず現状の問題点として、子どもたちが共働き等による家庭環境の変化により人との交流が少なくなっている点。また、多文化共生の理解度が低かったり言葉の壁があったりする外国人においても、コミュニケーションをとることが困難であるために、日本人の知り合いが少ないのではないか? という仮定から始まります。

そして現状把握のために、民間学童の小学校1~6年生115人に「悩みや困っていることはないか」「外国人とやってみたいことはあるか」といった項目でアンケート。外国人に対しても14か国、46人に「生活の中での不安や悩みはなにか」「子どもが好きかどうか」というアンケートを実施。
それにより、互いに好感を持ち、互いにやってみたいことが似ていたので、うまく活用できるのではないかと具体的な施策へ落とし込んだところ、スポーツやカードゲーム、触れ合い体験などのイベントを開催するという提案となったそう。

ただし、一部の外国人に対するマイナスなイメージもあって、保護者の中には交流させたくない、不安と思う人も一定数いるかもしれない。
そこで、高松市が主催(企画)し、実際の運営はプロポーザル方式によりNPO法人が運営(実行)する形が望ましいと提案、さらにイベントの様子をリアルタイムでブログに載せることで、行ってみたい、参加してみたいと思わせる施策も提案しました。
これにより外国人に対する悪いイメージの払拭や、居場所ができることによる孤立・孤独の解消が図れる。さらに関わる経験が将来に役立つ、住みやすいと思える街になっていくという効果も語ってくれました。

審査員からは、保護者の不安が高松市が主催するというだけで解消できるのか? といった指摘もありましたが、子どもと外国人を交流させるメリットなどは共感の声もあり、概ね高評価でした。
あなぶきアリーナから始まる「高松ファンづくりプロジェクト」(チーム高商)

三番目に登場したのはチーム高商の皆さん。あなぶきアリーナ香川の来場者を”高松ファン”に変える新しいおもてなしについての提案です。
現状として、あなぶきアリーナ香川などでのイベントを目的に初めて高松を訪れる若者(特にZ世代)が増えているのにもかかわらず、来場者がアリーナ周辺だけで完結している。また、市内回遊や再訪に繋げる仕掛けが少ない、高松の魅力を知る機会が限定的であることが課題であると提示。
そこで、市内の高校生、大学生を対象にボランティアメンバーを募集、アリーナでイベントがある際に高松駅周辺で観光案内や困りごと解決の手伝いなどを行う「Takamatsu Welcome Crew」を設立するというプロジェクトです。具体的には、研修を受けたメンバーが分かりやすいデザインのユニフォームを着て来訪者を案内するというもの。

活動に向けての方向性を知るためのアンケートも実施。ネットによるパネル調査(質問項目数16、回答数883)、RADWINMPSのライブ来場者に対する現地調査(質問項目数23、回答数95)により、
① 多くの人がうどん以外にたどり着けていない
② 高松で印象に残っているのは人のやさしさや温かい歓迎ムード
③ 約97%が高松にまた来たいと回答
という結果となったそう。

さらに「Takamatsu Welcome Crew」の活動を最大限に生かすために、デジタルマップ「アクセス&シティガイド」の制作、海沿いに都市名モニュメント(例 TKMT TAKAMATSU)を設置し撮影スポットを作成、市民参加型「WELCOMEメッセージ」を掲出し歓迎ムードを可視化するという3つの政策ツールも提案。イベントの街から人で選ばれる街高松へイメージを変化させるという、とても分かりやすく、政策としてすぐにでも実現できそうな提案でした。

審査員の皆さんも運用上のアドバイスなどが多く、全体的に評価が高かったように思います。
長期型キャリア教育プログラム「瀬戸内キャリアバスツアー」(香川大学起業部)

そして最後は香川大学起業部の皆さん。旅行という入口で多くの学生のきっかけを作る「瀬戸内キャリアバスツアー」を通じて、香川の魅力を知り、Uターンや関係人口を増やすという提案です。
まず問題として、香川県の高校生の83%は県外へ進学、さらに香川県の大学生の54%が県外へ就職し、若者が香川から出ていく流れが止まらないと提起。ただし、視野の拡大や成長へのチャンスなど、若者にとっては外の世界を知ることも重要であるため、県外に出る事は決して悪い事ではない。本質的な課題は「出ていくこと」ではなく「知らないまま出ていくこと」であるとし、単に若者を県内に引き留めることではなく、進路選択の前に香川の魅力や企業を知り、「県外に出る」「県内に残る」「いつか戻る」を自分で選べる状態にすることを目的とします。

さらに現状の問題点として、香川の既存の就活イベント等の施策は意識の高い学生をターゲットにしたものが多く、あまり将来に対して興味のない学生には届いてないと指摘、参加するハードルを下げるために旅行という入口で多くの学生のきっかけを作る「瀬戸内キャリア旅行バスツアー」を提案します。
具体的には、岡山や広島など瀬戸内の県外エリアに出向き、大学や企業を訪問。同世代の学生や、県外企業の現実を肌で感じることで、あえて外の世界を知り、これまで香川しか知らず比較対象の無い状態から客観的な価値を知る機会とします。さらに若手起業家や、個性的・挑戦的な経営者らによるオンデマンド講義を視聴することで、「こんな選択もある」と気づく施策も講じます。

これらを行う事で、これまでの「なんとなく県外がいい」「香川は何もない気がする」という状態から、「○○という理由で、今は県外に出る」「○○がしたいから、香川に残る」といった、どんな選択も自分の意思で語れるようになる。
また、県外の大学や企業の人たちと交流する事で、逆に県外の学生が香川を訪れる機会も増え、香川で学ぶ・働くという選択肢を知ってもらうという効果も期待できます。
最後に今後の展望として、バス会社や就職斡旋機関、各大学などと連携した持続可能な運営体制の構築や、本活動に参加する事で大学の単位が取得できるレベルまで発展させる事など、中長期的な夢も語ってくれました。

かなり練り込まれた提案だったので、質疑応答もかなり突っ込んだ内容が多かったように思います。私自身もプレゼンを聴いていて、これは高松市ではなく県へ提案すべき内容では? とも思いましたが、県外へ出るのを留まらせるのではなく「いつか戻る」という選択肢を与えるという着眼点はハッとさせられました。メディア運営者としても非常に夢のある、そして参考になるプレゼンでした。
そして審査の行方は?

参加チームすべてのプレゼンが終わったところで、昨年度アイディア賞を受賞された、かみんぐさんから活動報告が行われました。
高松盆栽の魅力を多くの人に知ってもらうために昨年考えた政策として、盆栽動画、盆栽4コマ漫画、盆栽アプリゲーム開発、盆栽部設立といった中から、実際に高松市公式Youtubeにて動画「ASMR 高松 BONSAI」を公開したこと、盆栽部を設立したこと、さらには苔玉づくりワークショップ開催などの活動報告を披露。現在ももっと多くの人に高松盆栽を広めようと色々奮闘中! と、楽しいノリで話してくれました。

てか、発表中にちょいちょい市長をイジるのが面白かった(笑)
かみんぐさんの苔玉づくりワークショップの様子はガーカガワでも取材していますのでぜひご覧ください。
関連記事 高校生が立ち上げた「盆栽部」が苔玉ワークショップを初開催!高松盆栽の魅力を伝える
さぁ、そして審査員の方々が別室で30分かけて協議を行った結果…
審査員特別賞は、香川大学起業部の皆さんとなりました!

表彰式の後めっちゃ悔しがっていましたが、政策提案内容の完成度ではピカイチだったと思います。特にマネタイズまで考えているところが起業部らしいなと思いました。
そしてグランプリは、チーム高商の皆さんです。おめでとうございます!

審査内容を聞いたわけじゃないのであくまでも私の感想なのですが、高校生の肌感覚だけでなくちゃんとアンケートを行って裏付けを取っている努力、そしてやっぱり明日からでもすぐ取り組めそうな単純明快さと、低予算でやれそうなところ。話題性もありそうですしね。実際に始まったら密着取材とかしてみたいと思うほど素晴らしかったです。
せっかくなので、チーム高商の冨田さんと半田さんに少しお話を聞いてみました。

ーーグランプリおめでとうございます!そもそも出場しようと思ったきっかけは?
冨田さん「去年の方(かみんぐさん)が市長に表敬訪問しているニュースを見て『こんなのしてるんや』と思って。私自身ライブに行くことがあって、これいけるかもって(ひらめき)、私が誘いました。」
ーー誘われてみてどうでしたか?
半田さん「こういうのやった事がなくて楽しそうと思ったし、私もライブとか好きで行くので本当に活かせるなと思って、一緒にやろうってなりました。」
ーーこれやるときに一番苦労したこととか、ここしんどかったみたいなことはありますか?
冨田さん「ライブに来た人たちの声を実際に聞きたいなと思って、ライブにアンケートを取りに行ったんですけど、やっぱり聞いてもらえなかった(なかなかアンケートに答えてくれなかった)ので、そこが一番大変でした。」
でも聞くところによると、100件近く回答を集めたそうです。すごっ!
ーーこれからどういうふうに広げていきたいと思いますか?
冨田さん「やっぱり最終的には香川を好きになってもらって、香川のリピーターを増やして、そこから香川に移住してもらったり関係人口を増やせて行けたらと思います。香川のこと、高松のことをもっと有名にしたいです!」
いやほんと、メディアやSNS等も大事だけど、本当に高松のことを好きになってリピーターになってくれるのはその土地の人との思い出だったりするんですよね。観光案内や個人的なおすすめなどを直接的な触れ合いの中で伝えていくという今回の提案は、まさに高松ファンを増やす一番の近道かもしれませんね。
後ろの方でずっと真剣に耳を傾けていた中学生たちにも感想を聞いてみました。
「子どもと外国人の提案を聴いて、自分たちの学校の授業と重なるところがあって、(外国人は)子どもと関わること好きだったんだと知れて参考になりました。今年度の授業は終わっちゃったんですけど、来年もまた(外国人と)関わる機会があったら生かしていきたいと思います。」
「皆さん素晴らしい発表ですごいなと思って、さすが高校生や大学生だなと思ったんですけど、しっかりとメリットやデメリット、効果など、それをちゃんと順序よく組み立てられていてしっかりしているなと思いました。ちゃんと体系立てられて分かりやすくまとめられているのでとても参考になりました。」
いやいや、中学生でそこまでしっかりとしたコメントが出るとは思ってませんでした。さすがTKMT!(それ言いたいだけやん!)

という事で、1月24日に行われた「たかまつ政策アイデアコンテスト2025」のコンテスト決勝の様子をお届けしました。
全体を通しての感想ですが、皆さんのプレゼンを聴いていて、実は香川の情報を発信するメディアとして耳の痛いことばかりでした。
防災に関してはほとんど記事を書いてないし、外国人と子どもをテーマにした記事もそう言えばほぼ書いてない。高校生や大学生の皆さんに香川の魅力をもっと伝えないといけないし、私も気にはなっていたけどアリーナに来た人に周辺の観光などを伝えるのは私の仕事でもあります。
ほんと、私自身もいろいろな気づきのある有意義なコンテストでした。
ともあれ、ご参加の皆さんお疲れさまでした!

おしまい。
