
各都道府県の代表が、ヘアスタイル、カット、着付、ネイルなど7種目の競技に分かれて日頃の技術を競い合う「第53回全日本美容技術選手権大会(主催:全日本美容業生活衛生同業組合連合会)」が2025年10月7日、福島トヨタクラウンアリーナ(福島市)で開催されました。
そのフリースタイルカット競技部門において、香川県代表である高松市の美容室「サンドロ」のオーナースタイリストである櫻井勇介さんが見事優勝されたと聞き、さっそくお話を伺って来ました。
関連記事 美容室難民に捧ぐ!「サンドロ」誰が乾かしても決まる髪になる美容室
全美連が開催する唯一のオフィシャルな全国大会「第53回全日本美容技術選手権大会」で、県勢初の快挙

ーーこのたびは全国大会優勝おめでとうございます! まずは今回の大会について教えていただけますか?
櫻井さん「この大会は美容組合(全日本美容業生活衛生同業組合連合会)に加入している人のみが参加できる全国大会で、各都道府県の代表が集まり日本一を決めるものです。約60年前から続く日本で最も古い大会で、厚生労働大臣賞もある唯一のオフィシャルな大会です。他にも美容メーカーなどの主催のコンテストや大会がありますが、この大会は美容組合主催で日本で唯一のオフィシャルなものです。」
ーー櫻井さんが優勝した競技の内容は具体的にどのようなものですか?
櫻井さん「今回出場したのはフリースタイルカット競技で、制限時間40分の中でモデルの髪をカットして仕上げます。お題は『トレンドスタイル』で、髪型だけでなく服装、ネイル、アクセサリーなどもトータルで評価されます。パーマは必須で、カラーは自由ですがやらないとまず勝てない。あと実際に本人がカットしたところを見せるため(替玉等の不正防止のため)3センチ以上切るルールがあります。」
ーー櫻井さんは美容師としてはベテランだと思いますが、このタイミングで初めて大会に出られた理由は?
櫻井さん「先ほど話した美容メーカー主催のコンテストには(東京での修業時代に)よく出ていました。何せメーカー主催なので資金力がすごくて、武道館や東京ドームを借りて、芸能人をゲストに呼んで派手にワーッみたいな(笑)。その後こっち(高松)に帰ってきて、こういう大会があるのは知っていて父からも出ろ出ろと言われていたのですが、自分が主催するセミナーなどの日程が毎回被って出場できなかったんですね。今回たまたま出れるタイミングだったので出場したら、あれよあれよという間に県代表になってフワッと全国大会でも優勝したという感覚です。」
お店には偉業を称えるお祝いの花がたくさん届いていました。

ーーとは言え、いろいろご苦労はあったと思いますが、大会にはどういうコンセプトでやろうと、戦おうと思われたんですか?
櫻井さん「僕はモデルを決めてから戦うというのが常にあるんですよね。そのモデルに応じてみたいな。モデルを決めるのはすごい大変なんですよ。」
ーー櫻井さんの中にもイメージがあるでしょうし、それに合致したモデルさんを見つけて、今度はモデルさんに合わせて落とし込んでいくような感じ?
櫻井さん「モデルさんの顔を見た瞬間に(コンセプトやイメージが)全部降ってくる感じなので、顔を見て降ってこない人はやめるんですよ。パッと見て、このモデルさんなら行けそうかなって決めるのですが、一番苦戦したのは、香川県って人が歩いていないじゃないですか(笑)捕まらないですよ。やべぇって思って。」
確かにほぼみんな車移動なので人は歩いてないし、街に出ても若者は極端に少ないですよね…
櫻井さん「そこで、元々東京でコンテンスとか撮影とかで協力してくれていたモデルさんが何人かいるんですけど、そのうちの一人にこっちに来てよって、大会3日前に来てもらいました。」

ーー先ほど大会のお題に『トレンドスタイル』というのがあったのですが、やはり最先端な感じですか? カラー入れまくりとか、高松の商店街歩いたら、うわっ!みたいな感じの(笑)
櫻井さん「うわー!にも2種類あって、(あまりにも浮世離れしていて)ふわーっ… ていうのと、(憧れの目で)うわー! っていうのがあって、僕の場合は後者です。いいじゃーん! みたいな、めっちゃかっこいい。でも私はちょっと勇気ないな、でもかっこいいよねー! っていうのを僕はよく作る。二極化するんですよ。突き抜けすぎているものは僕はやらないです。」
ーーファッションショーのランウェイにしか歩いてないみたいな(笑)
櫻井さん「僕が基本考えているのは、(コンテスト用のスタイルから)ちょっと長さのバランスを変えたら日常生活に落とし込めるスタイル。トレンドの話をすると、今は金髪とか多いんですけど、もうこれからは流行らなくなるから、服はそういうすごい飛んだ色じゃなくて、ちょっとシックな感じで、その代わりにポイントをどこかに必ず持っていくっていうのを今回は入れています。」
ーーそれって、写真なんかあったりします?
大会出場時のスタイル(※画像は櫻井さん提供)

ほーっ! へーーっ、すごい!(ファッションに疎すぎて適当な誉め言葉が浮かばない。笑)
櫻井さん「根元が赤いのはゴーストカラーって言うんですけど、根元は赤いけど毛先は黒いんですよ。これで髪を振ると、いきなり(赤が)現れるみたいな。モデルの競技の場合は2パターンあって、座って審査、座って見られる、立って見られる。あともう一つはウォーキングをするっていう感じなんです。この大会ウォーキングはないんですけど、僕はウォーキングをするところまで想定してやっているので、例えば退場っていう時に何だろう? 見方違うしみたいな…。そのところまでを計算してやっている感じです。」
ーー出場時のエピソードとかありますか? わーっ、しくったーみたいな(笑)
櫻井さん「これね、制限時間が40分しか時間ないんですよ。40分しか時間ないってことは逆算したらカットする時間って超ダッシュで切って20分~25分、そして仕上げで10分、カットクロスとか立ってもらって最終チェックをするんですけど、これとかを含めると時間が本当になくて。さっきの話の3センチ切るっていうルールがあるんですけど、みんな最後の仕上げだけみたいな感じで3センチしか切らないんです。今回はデザインの大会じゃないですか? 決まりきった形を切ろうというものじゃないから、僕はそういうのはあまり好きじゃないんで、一切仕込みをせずにめっちゃロングな状態から10分で切りました。」
ーー超ダッシュで20~25分かかるものをたったの10分でカットですか? しかも大会本番に!
櫻井さん「それにはちょっと深いわけがあって、本番中にアクセサリーとかピアスを付けなければいけないっていうのが開始10分前に初めて知らされて、えっ?!ってなって…。僕らは(あらかじめ段取りを)計算してやるんですけど、ちょっと待って! 人にも自分にもピアスなんかつけた事ないぞ!!って。この衣装はピアスとネックレス必須なんですよ。ピアスを取ってつける練習を直前になってやったら手が震えちゃって… とりあえず入ったら本番なんとかなるし。 それでネックレスをつけようと思ったら、手汗がすごすぎて、滑っちゃってフックがバキッとなってもうつけれない。 これはどうしようと思ったら、目の前にガムテープが転がっていたのでなんとか付けることができて、本番これでなんとか戦えるわっていうね(笑)」
それはかなり焦る!
櫻井さん「本番は苦手なものから先やろうと思って。40分しかないのでみんな超真剣にカットしてるんですよ。その中で僕一人だけピアスとネックレスをずっとやってて、気がついたら時間が10分かかっていました。ピアスとネックレスで10分かかったって、どういうこと?って、30分しかねー(笑)。
どうにか頑張って10分で切れるスタイルにして、なおかつ勝てるスタイルにしないといけない…。こういう大会ってみんな1個のヘアスタイルに対してめちゃくちゃ練習するから、変な話ちょっとでも狂ったらもうギブアップぐらいの感じになります。でも幸いなことに、僕は練習してなくても毎日がコンテストだと思いながらやっているので、普段鍛えられている経験から10分だったらこうやってこうやろうかなって頭の中でパッと計算してカットを済ませ、むしろちょっと時間が余って、さっきスプレーやってたんですけどスプレーやってるフリをするっていう(笑)」
大会本番の様子(※画像は櫻井さん提供)。しれっとやっているようで、実は裏ではこんなハプニングがあったんですね。

ーーそんなハプニングもありつつ見事に優勝されたわけですが、これをきっかけに何か周りの変化とかありましたか?
櫻井さん「もちろんね、こういうタイトルを取ると拍がつくっていうのがあると思うんですけど、今後の美容院経営でプラスになるようなこととかって特にないんですよ。タイトルを取ったことで、人より実績欄に一行を多く書けるとかですかね。
ただ、この優勝旗は店に半年間置いてなきゃいけないんですが、これを置いてたらお客様がめっちゃ反応してくださる。その意味では、お客様への信用にもなるのかなぁと思います。経営の数字というよりかは、サンドロっていうブランド力がちょっと上がったかなっていう感じではありますね。」
傍から見るとほんとすごい事だと思いますが、櫻井さん本人はこれまで多くのコンテストで優勝などの経験があるためか、あまり「やったぜベイビー」みたいな感じは見受けられませんでした。
そう書くと鼻もちならないヤツと思われるかもしれませんが、本来、職業的なコンテストというのは普段やっている事をどれだけ出し切れるかというものですので、優勝したからって何かが変わるものでもないし、逆に変わってしまうのもおかしな話です。櫻井さんにとっての大会とは、ご自身の技術の現在地を確かめる位置づけだったのかもしれません。
櫻井さん「この大会に出場するのは、今、自分の感覚って世の中的に合ってるのかなっていう僕の中でも答え合わせだったんですよね。優勝させていただいた事で、(今の自分の感覚が)合ってたんだなっていうのが今回の印象です。その意味では、ほっとしたみたいな、優勝できてよかったなと思います。」
ーー最後に、今後の展望などあれば。
櫻井さん「これを機に連覇への道を作ったので連覇を目指すのもいいですね。そしてその先にある代替わり。だから、enoちゃん(同店の後輩スタイリスト)が僕の代わりに勝ってくれたら。いつかどっかのタイミングで僕を倒して、ガッと行ってくれたら、僕は満足です(笑)」
最初に同店を取材した時から最先端のセンスと技術を持っていると感じていたのですが、今回全国大会で優勝されたことで、その裏付けがなされたというのが私の印象です。タイトルにも「快挙」と書きましたが、聞けば香川県では初の事だそうで、そういう意味では快挙、でも櫻井さんにとっては快挙でもなんでもなく、普段から真摯に仕事と向き合ってきた延長線上にあるものだったんですね。
美容室選びに悩まれている皆さん、紫紺の大優勝旗が飾ってあるサンドロさんに一度カットされてみてはいかがでしょうか?
個人的には職人気質がありつつも、程よいチャラさのある櫻井さんが大好きです(笑)

おしまい。
| 店名 | サンドロ(SANDRO) |
| 所在地 | 高松市六条町599-2 |
| 電話番号 | 087-880-9870 |
| 営業時間 | 火・水・金曜 9:30~21:00 木曜 9:30~19:00 土日祝 9:30~20:00 ※カット最終受付は閉店1時間前 |
| 定休日 | 月曜日、第四火曜日 |
| 駐車場 | あり |
