
ここ1、2年でAIの技術が劇的に進化し、写真や動画、アートの分野では人が創るものと遜色ないレベルに達しています。
写真撮影やライターの仕事もしている身としてはかなり脅威を感じているのですが、逆にうまくAIを味方に付けることで、今までできなかったことが表現できるようになるといった期待感もあります。
また、「頭の中ではイメージはあるのに、それを表現する技術がない…」と諦めていた人にとっては、ただそのイメージを言語としてプロンプトに落とし込むだけで、作画や動画、曲作りまで行ってくれるAIは、新たな可能性をひらくツールになるかもしれません。
今回は、そんなAIアートの世界で活躍するクリエイターさんに、現状のAIで出来ることとその作り方、そもそもAIクリエイターになったきっかけや思いなどについてお話をお聞きしてきました。
もしかすると、このページを読むことであなたの今後の人生が変わるかも?!
瀬戸内から、猫とアートのやさしい未来を!香川で新しい表現をつくるAIアートクリエイター

お話を伺ったのは、高松市を拠点に「瀬戸内から、猫とアートのやさしい未来を。」をテーマに、AIを使ったアート制作・映像制作・地域発信を行っている、中村 千雅(なかむら ちが)さん。
第4回AIアートグランプリ短編動画部門優秀賞受賞のほか、SHIFT AI画像生成コンテストで2度の優秀賞受賞を誇り、最近では作品制作の傍ら初心者向けAIアートの講師などもこなされています。
■第4回AIアートグランプリ短編動画部門優秀賞受賞作品(作品映像は5:13~)
ーー中村さんはどのような経緯でAIアートに取り組むようになったのですか?
中村さん「京都出身で調理師として飲食業界で働いていましたが、母の実家である香川に引っ越してきました。1年半ほど前に大病になり、動けなくなった時期にできることとしてパソコン学習を始め、そこからAI、とくに画像生成に興味を持ちました。美術がもともと好きだったのでAI画像生成にハマり、SHIFT AIというオンラインコミュニティで学習し、コンテストで受賞も経験しました。こうした経験からAIアート制作とともに、AIを通じて自己表現の楽しさを多くの人に伝えたいと考え、AI講師の仕事をしたいと思うようになりました。」
ーー猫に関連する作品が目に付きますが、何かこだわりがあるのですか?
中村さん「家に2匹飼っていて、それと4~5匹の野良猫が家にやってきます。野良猫はどんな過酷な状況でも必死に生きており、闘病中にとっても勇気をもらいました。その恩返しの意味もあって、AIを通じて何か野良猫たちの力になれないか… と、いつも考えています。来年2月にはチャリティーで小さな個展を行う予定で、ポストカードなどの売り上げの一部を愛護団体さんに寄付させていただくつもりです。」

中村さんの作品を見ていると、AIでここまで出来るのかと素直な驚きがある反面、私も写真撮影などを仕事にしていますので、そういった立場からすると「ここまでAIにやられたらかなわんなぁ… 仕事なくなるやん!」という不安も出てきます。そのあたりをお聞きすると、AIではすごく綺麗な絵は描けるものの、やはり人間の創るものには勝てないと言います。
中村さん「うちの妹はAIアンチなんですけど、妹に言わせると『全部一緒に見える、きれいやと思わへん』そうです。実は私もそれすごく思うんです。AIの作画などを見てるとすごいなとは思うのですが、作ってる時の自分との対話というか、そっちの方が大切だなと思っていて、プロンプトをいろいろ考えたりする作業とか、自分の発想、そこから生まれてくる自分の気持ち、自分はこういうものが好きでこういうものが美しいと思うなとかいろいろ気づきが出てきたり…。アートに限ったことではないのですが、AIはただのツールであって、便利なものではありますけど、やはり元となるのは人間の発想であったり、AIにどう表現させるかであったり、人間そのものだと思います。」
写真でもそうですが、商用写真の場合だと、最終的な目的はモノやサービスを売る事であったり、観光系なら旅行者に足を運んでもらう事だったりするので、そこから逆算してマーケティングや顧客心理などを考えながら撮影する必要があります。それを伝えるならこっちよりあれを撮りましょうね… なんて撮影現場ではコミニュケーションを取りながら撮るので、撮影技術以外にも広告やマーケティングの知識や経験が必要だったりします。やはり、そこは人間が必要な部分として残り続けるんでしょうね。
中村さんの作品の一部(画像は中村さん提供)。作画はAIですが、中村さんの思い描く世界観が遺憾なく発揮されています。

では実際に、AIを使ってどう作画していくのか? 簡単なやり方をお聞きすることにしましょう。
中村さん「私は Midjourney というAI画像生成ツールを使っているのですが、いきなり適切なプロンプト(指示を与える短い文章)は浮かんでこないので、まず ChatGPT で例えば『スチームパンクの世界で少年と猫が飛んでるみたいな感じの画像が作りたい』と打ったらプロンプトの候補を上げてくれるので、そのままコピペで打ち込みます。当然それだけではイメージどうりには作られないので、ここをこうしたいとか、この色を変えたいとか、新たなプロンプトを追加して、会話しながら作り上げていくイメージです。また、Midjourney は日本語のプロンプトより英単語のプロンプトの方が伝わりやすいので翻訳ソフトなども使っています。」
AIでちゃちゃっと作るイメージだったのですが、これは意外と発想力と手間がかかる!

ーーじゃあ、中村さんのInstagramにアップされている、この歌をうたう動画はどうやって作るんですか?
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中村さん「まず先ほどの要領で Midjourney で女の子の画像を作ります。あわせて Suno AI という音楽生成AIがあるので、こちらでプロンプトを打ち込んで曲を作ります。最後に、DomoAI という動画作成AIに画像と音源データーを入れて、曲に合わせて歌うように静止画像を動かせる指示を出して作り上げていくイメージですね。」

ーーえっ、ちょっと待ってください。単なる画像を動かすって…、写真の顔を動かすみたいな事ですか?
中村さん「はい、私は(道義的に)それってちょっとどうかな… と戸惑ったのですが、あるホテル関係の方から葬儀などで遺影の表情を動かして遺族へのメッセージを流すってどうですか?と聞かれたことがあるのですが、そういった事も可能なんですよね。」
なので、こういったパン屋さんのCM動画も撮影なしで作ることができるそうです。必要なのは、Midjourney と Suno AI 、そして DomoAI という生成AIのみ。しかもそれぞれ無料で使えるプランもあるそう。
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もっとも、実際に子役を探して撮影するよりコストはかからないかもしれませんが、プロンプトを何度も入力してイメージに近付ける作業も相当な手間と工数がかかるので、格安でちゃちゃっとお願いみたいなことは当然無理な話です。
それと、最近ではリアルかAIかを判別するAIチェッカーも多数出ているので嘘は付けないし、例えば山手線に存在していない電車が走っているみたいな、よく見ると矛盾点の多い動画になることもあるので、やはりリアルとAIは用途に応じて使い分ける必要はありそうです。
ただ、映像にしろ写真にしろ、例えばこんな背景をリアルに作るとなると不可能に近いので、実際に撮ったものにAIで作った背景を合わせるみたいな使い方はできそう。これは面白い!

ーーそれにしても、ここまでアートや動画などが制作できるなら、いろいろやれる事も広がりそうですね?
中村さん「でも、私の中では作品を作るというよりは、AIアートの楽しさや奥深さを知ってもらいたい、広めたいという気持ちの方が強いので、どちらかというと教える側になりたいですね。」
ーーでも、やるからには利益も上げていかないと続かないですよね?
中村さん「そもそものきっかけが猫に恩返しをしたいという事があるので、お仕事があればそこはきちんとやりたいと思います。」
お話を伺っていて、一見物静かで謙虚な方だったのですが、中村さんの頭の中にはすごい世界観が広がっているんだろうなと思いました。何かを表現したいけどその術が分からない… って方には、中村さんのようにAIをうまく活用してみるという手もあるような気がします。
詳しくAIアートについて知りたい方は、今後、サンポート高松にある「Setouchi-i-Base」などで講習会も行われる予定とのことなので参加されてみてもいいですね。また、中村さんに動画など依頼されたい方はInstagram(@chiga_0912)のDMからご連絡くださいとのこと。
【追記】
せっかくいいことを教えてもらったので、私も最近神戸ロケで撮った写真の中からお気に入りのものを使ってアニメ化してみました。
とりあえずChatGPTにプロンプトを何度か入れただけですが、わりと簡単に出来ました(笑)

