LGBTQ+とは、性的指向や性自認、性表現などのマイノリティを差す言葉で、レズビアン、ゲイ、バイセクシュア ル、トランスジェンダー、クエスチョニングの5つの頭文字を取った言葉に、プラスアルファである「+」を付けた通称です。
昨今では多様化が叫ばれる中、性についても多様であっても良いのではという考えが広まり、LGBTQ+の方々に対する世間の目や人権についても少しずつ改善されつつあります。ただその一方で、TEAFをはじめとするトランスジェンダーを排除しようという動きもあり、そういった一連の動きが分断を生み、当事者たちにとって却って生きづらい世の中になったという指摘もあります。
その象徴的な話題として「トイレや銭湯はどうするの?」といった議論がネットを中心に巻き起こったことも記憶に新しいと思います。
私自身は人様に対してマイノリティとかマジョリティとか区別して接するほど器用ではないので、あくまでも人として好きか嫌いかという見方しかできません。なので、これまで本誌ガーカガワでもことさらLGBTQ+について取り上げることはなかったのですが、今回「性転換をしたガテン系農業女子が頑張ってます!」といった内容のプレスリリースをいただいたので、正直に言うと単純にトランス女性に会ってみたいという好奇心から取材に伺う事にしました。
農機具王 香川店(坂出市)で働くトランスジェンダー、森田涼子さん。
てか、めっちゃノリええやん!(笑)
何分、LGBTQ+については不勉強なもので失礼なことを聞くかもしれませんが、よろしくお願いします。
トランスジェンダーは特別な人じゃない。普通に存在していることを知ってほしい。
いきなり気さくに接してくれた森田さん。トランス女性と聞いてなければちょっとゴージャスなお姉さんという印象を持ったと思います。ここに至るまで当然さまざまな苦労があったと思うので、まずはその辺りから聞いてみましょう。
ーーいきなりで恐縮ですが、そもそも一番最初に女性を意識しだしたのは何歳ぐらいからですか?
森田さん「10歳くらいですかね。当時はまだ性同一性障害と言われていたのですが、それの特集を何かで見て、その事例みたいなものと自分自身の今の状況を照らし合わせて、そこで初めてこれじゃないかなと自覚しました。」
ーー幼少期に何かちょっと他の子と違うんじゃないかって思ったようなことがあったとか?
森田さん「元々女の子っぽい感じがあって、そういうのでいじめとかもあったし、だけど、男の子らしくしようとして頑張ってた時期もありました。その辺りから、違和感は多分ずっとあったけど、腑に落ちたのが10歳くらい。」
ーー 学生時代はどんな感じだったんですか?
森田さん「学校生活の中では恵まれてはなかったんですけど、私生活の方では周りの方に恵まれたから、ネイルしたりメイクしたりしてましたね。」
ーーそれに対して周りは?
森田さん「ありますよ(笑)ありますあります。やっぱり目立つので、いじめの対象になりますし、学校も多分小学校5、6年生ぐらいから行ったり行かなかったりで不登校になって、中学校は、ほぼほぼ行ってなくて、多分3年間で100日行ってないぐらい。」
ーー21~23歳頃に性別適合手術を受けたそうですが、やろうと思ったのには何かきっかけがあったのですか?
森田さん「15歳頃から見た目が女性化していたので、8年経って子どもに対する諦めができたんですよ。ここで子どもを作らなくてもいいって選択肢ができた時に、その手術を決断したって感じですね。ただ、ずっと女性として生きてきて(トランスジェンダーであることを)オープンにしてきたので、手術したから何か特に変わったということはなかったですね。」
とは言え、小さい頃からいじめも経験して、成人してからもトランスジェンダーだからという理由で余計な苦労もあったと思います。それでも女性を貫き通すには相当な覚悟があったと思うのですが、そんな疑問には笑いながら「負けず嫌いなんでしょうね」と答える森田さん。今はまったく後悔がないように見えます。
ここで昨今の風潮についてどう思うか聞いてみましょう。
私は一部の事例を切り取ってトランスジェンダーの権利全体を否定するような動きには違和感を感じているのですが、例えばトイレや銭湯どうする?問題について。
ーー最近よくトランス女性が女子トイレを使う事や銭湯の女湯に入ってくることに嫌悪感を持つ女性の話題が出て、それに対して熱い議論が交わされたりしているじゃないですか? それについてはどう思われますか?
森田さん「正直私自身はどちらも利用しないので、銭湯も行きません。プールやジムなどもそうですけど、更衣室を利用しないといけないところは基本的に避けています。まあ、後々トラブルになることを避けている人たちの方が私の認識の中で多いイメージです。もちろん声を上げている人もいるのですが、普通に生活している(トランスジェンダーの)人たちはお互い嫌な事はしないように生きている人たちがほとんどだと思います。」
ーーそれに対して何かストレスはありませんか? たまには温泉にも行きたいよねとか。
森田さん「それは貸切風呂とかいろんな選択肢があるので、自分の中で選べる選択肢の中で充実させていくというところが大きいのかな。ただ、別にこれは私たちだけの話じゃなくて、ハンディキャップを持った方や、マイノリティじゃない人たちだっていろいろ我慢している部分はあると思うので、特別私達だけ悔しいということは考えたことはないですね。」
そこはトラブルにならないよう配慮している人が大多数のようですので、ネットや動画で騒がれているようなことは、なくはないけど、特別視するほどのことでもないのが実態かなという印象です。
ーー他にトランス女性っていう立場の中で困ったことってありますか?
森田さん「そうですね… まだ名前とかを変えてない時に、見た目と名前が合わなくて病院や市役所などで手続きがうまくいかなかったりとか。あのご本人呼んできてくださいみたいなことは結構困りましたね(笑)」
ーー逆に良かったと思うことってありますか?
森田さん「こういった場(取材)を設けていただいたことですかね(笑)。普通に生きていたら恐らく声がかからなかったであろう場に出させていただける事に関しては、周りの環境も含めてありがたいなと思っていますね。」
それは恐縮でございます(笑)
ーー森田さんはトランスジェンダーという立場で講演活動もされているそうですが、どんな話をされているのですか?
森田さん「トランスジェンダーと言っても普通なんですよ、と話すことが多いですね。私も普通に会社員をして、普通に家庭を築いて暮らしてますと。特に何か伝えたいとか広めたくて話してるわけじゃなくて、(トランスジェンダーの人たちは)普通にその辺にいることをお伝えしたいだけです。私は地元で10年ぐらい会社員やってたので、フリーターの時にはあなたの近所のコンビニで私は働いてましたとか、この不動産屋さんで働いてましたよとか、ここの会社にいましたよっていうのが地元の人たちに話すと結びついていくので、そのくらい近くにいましたよと。だけど別に何も思わなかったでしょ? それでいいんじゃないですか? みたいなお話をさせてもらっています。」
森田さん「普通でいいんじゃないかなっていうのは、子どもたちにもお伝えしています。良くも悪くも特別扱いをするんじゃなくて本当に普通にっていうのが結構大きいですかね。自分が子どもの頃は職業を選択しようと思ったら(トランスジェンダーの自分には)やっぱり水商売しかなかったんですよ。でも今はそういう状態ではなくなってきているじゃないですか? 結構どこの会社さんにもオープンにしない方が多くいらっしゃるので、そういう環境になってきてるよってことがお伝えできるかな。
実際に学校で講演させていただくと、目の前にいる400人500人いる中だとその中に(LGBTQの人の比率が)10%って言われているので、必ず何人かは悩んでいる子がいるはずで、そんな子や周りの子たちに『普通なんだよ。だからそんなに意識しないでね。お店に行ったらいるよ。スーパーで買い物してるよ。その辺にいるよ。』みたいな。そんなこともお伝えできたらなと思っています。」
LGBTQ+も含めて多様性のある社会というのは、案外「認める」ことじゃなくて、普通に当たり前に多様な人たちが存在する、あるいは存在できる状態のことなのかもしれませんね。
気軽に遊びに来てほしい!中古農機具の買取・販売店「農機具王 香川店」
そんな森田涼子さんが勤務する「農機具王」は、全国33店舗を誇る国内最大規模の農機具買取・販売店。ここ香川店は四国全域をカバーし、無料出張買取・店頭買取・販売を行なっているそうです。
広い倉庫のような店内には耕運機やトラクター、田植え機などが所狭しと並んでいます。
トランス女性だけじゃなく、トランスフォーマーみたいな農業機器もかっこいいと思ったので、せっかくなので森田さんに少し案内してもらいました。
森田さん「これってなんていう機械か知ってますか?」
コンバインでしょう? ヤン坊マー坊天気予報を見てきた世代をナメちゃぁいかん(笑)
ーーところで、職場の雰囲気はどうですか? 会社の人も最初は戸惑ったのでは?
森田さん「ここの会社に関してはもともと知ってる方がかなりいらっしゃったので、特にその、弊害なく入ったというか。
後から入ってきた新入社員とかの方が途中で会話の流れ的に気づいて、あれ? みたいな(笑)」
ーーお仕事自体はどうですか?
森田さん「面白いですよ。いろんな人とお話しする機会も多いですし。自分たちの食に結びつくことなのに知らなかったことがこんなにいっぱいあったんだ。農機具高けぇ! みたいな(笑)」
ーーお客さんの反応はどうですか?
森田さん「お客様はですね、正直お伝えしてないので特に触れない方が多いです。」
まぁ、そこはお客さんにことさらトランスジェンダーですなんて言う必要もないですもんね。気づくお客さんもいるでしょうし、自らオープンにされているので後で知るお客さんもいるでしょうけど、当然ですが特別なにか仕事に支障があることもないそうです。
ーーちなみにどういったお客さんが多いんですか?
森田さん「新規就農の方とかですかね。一番若い方は16歳から。高校生で農業の学校に行きながら農業を行ってるんですみたいな方が一番最年少ですかね。上だと90歳オーバーとか。純粋に農機具を見るのが好きな方もいらっしゃるし、実際に買いに来られる方とかも多いですし…」
ーーじゃあ、ガチ農家の人たちばかりでもないんですね。
森田さん「見ての通りお店もこんな感じ(開放的な倉庫)だし、私もこんな感じだし(笑)、割と好きに見ていってくださいね~というノリです。まったく農業に関係ない方も来られますよ、お子さん連れのお父さんが『子どもがトラクター好きなんで見せてもらっていいですか?』いいですよ~! みたいな(笑)」
ーーまぁ、そこはどなたでも気軽に来てね~って感じなんですね。
森田さん「(倉庫みたいなので)入りにくいと思いますけどね~(笑)」
どこまでもノリがええんかいっ!(笑)
でも、「ご自由にどうぞ~! なんかあったら声かけてねぇ~っ」みたいなゆる~い感じの方が逆に親しみが湧くかもしれませんね。農業をこれから始める人、あるいは高齢で引退される人、単に農業やトラクターに興味のある人などなど、小気味よいトークが魅力の森田さんを訪ねてみてはいかがでしょうか。
ーーでは最後に、トランス女性としてではなく農機具王の森田さんとしてひと言どうぞ!
森田さん「て言われると難しいですね(笑)。えーっ、個性あふれるスタッフと、あとは自由な会社です。いつでも、用がなくてもぜんぜん来ていただいて大丈夫なお店なんで… お待ちしてま~す!」
いやもう、このキャラおもろい! バラエティ枠で今度またガーカガワに出てもらおう(笑)
店名 | 農機具王 香川店 |
所在地 | 坂出市西庄町1129 |
電話番号 | 0120-523-063 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
休業日 | 日曜日 |
駐車場 | あり |