古くから高松藩の菩提寺である法然寺の門前町として栄えた高松市仏生山。
今もなおその情緒を残す町並みが広がっていますが、近年ではモダンな佇まいで人気の仏生山温泉や、四季折々の草花が美しい複合施設・仏生山の森、大衆演劇が毎日公演される仏生山天満座なども人気で、古いものと新しいものがほど良く混在した、知る人ぞ知る観光スポットです。
そんな情緒あふれる門前町にこの4月、古い町屋を快適に過ごせるよう改装した町の宿「凪 -NAGI-」がオープンします。
今回は、オープンに先立ち行われた内覧会にお邪魔したので、この素敵な宿をたっぷり紹介します!
こころ凪ぐ3部屋のみの小さな町宿で、ゆったりとした大人の時間を愉しむ。
宿があるのは仏生山お成り街道沿い。ことでん仏生山駅から徒歩6~7分という好立地です。
築約100年という古い町屋を改装した宿とのことですが、外観を見る限り、良い意味で改装した形跡があまり感じられません。最近では何でこうなるの?とがっかりするリノベーションが散見される中、古いものの良さを生かしながら必要な場所に手を加えるというこだわりを感じます。
玄関の土間で靴を脱ぎ広い和室に入ると、その瞬間「あっ、これいいな。」と思わずつぶやいてしまう落ち着きのある空間が広がっていました。
街道側の表の間と、床の間や書院を備えた格式の高さを感じる奥の間が続き、その中央には二間続きの掘りごたつとテーブルがどーんと設置されています。
ここは主に朝食をいただくスペースなんだそうですが、掘りごたつに蓋をすることでイベント等にも使えるよう設計されているそうです。
そして奥の間からは趣のある中庭。東向きなので、朝日に照らされた美しい自然を愛でることができるでしょう。
しばらくこの奥の間に座って宿の説明をお聞きしたのですが、ふとこの居心地の良さは快適な室温にもあるんじゃないかと気づきました。
最近では古民家を一棟貸しのゲストハウスに転用する宿泊施設も増えていますが、なにせ建物が古いから冬は寒いし夏は暑い。この日も古民家と聞いて実は一枚多く着込んでいたのですが、冷える感じがまったくないんですよね。
この点については施設全体の改修を行った三豊市の「しわく堂」さんも感じていたそうで、日本各地で文化財建造物の保存修理や活用整備プロジェクトを進める中で得たノウハウを存分に発揮。表から見えない形で耐震補強を行ったり、断熱効果を高めたりしているそうです。
「古民家の宿に泊まったけど寒くてもうこりごり」なんて方も快適に過ごせるんじゃないでしょうか。
高松市の「HIFUMI」さんが元々あったものに敬意を払いながら修復したという中庭を眺めながら廊下を歩くと、
宿と言えば絶対に外せないこれ。旅の疲れを癒す浴室です。
鏡にしつらえた月のような飾りがレトロっぽくてかわいい。
そして浴室にどーんと置かれているのは「木桶づくりのひのき浴槽」です。これは絶滅の危機に瀕した木桶づくりを復活させようと活動する小豆島の「木桶職人復活プロジェクト」のチームが組み上げたもの。
全身を包み込むレインシャワーが設置されているなんて、旅慣れた人じゃないとこの発想は出てこない。
お風呂は宿泊客ごとに時間を決めて貸切にて運用するそうです。
気になるお部屋ですが、2階には大正期の町屋建築の細部意匠を活かした、個性の違う3つの客室を備えています。最大3名宿泊可能な和室2室と、ベッド単位での利用が可能なバンクベッドルームです。
こちらは中庭を見下ろすことができる和室「nodoka」。
縁側からの眺めは最高で、ここに腰掛けて月を観ながら旅先で仕入れた地酒でキューッとやりたい。
そしてお成り街道側の和室「akari」。
無粋なむき出しのエアコンなんてありません。ちゃんと天井に自然な形でビルトインされています。
やっぱりベッドじゃないと落ち着かないという人にはこちら、「nami」。
快適に観光するためには実は質の高い睡眠は地味に重要ですよね。二段ベッドそれぞれに設置された寝具には徹底的にこだわったそうです。
そして、何気に電灯がいい感じ。気づかない人が大半だろうけど、こういったひとつひとつの小さなこだわりって、最終的な「泊って良かった」という感想に繋がるんですよね。神は細部に宿る!
そして至福の一夜を過ごした後の仕上げには、こちらもこだわりの朝食が待っています。
残念ながら内覧会では現物を確認することができなかったのですが、ごはんは地元の米を専用の釜でひとりひとりの時間に合わせて炊き上げ。お味噌汁は観音寺市「やまくに」のいりこ出汁に、三豊市「丸岡味噌麹製造所」の自家製味噌を使用。丸岡さんは先日ガーカガワでも取材に行きましたが、これはほんと一度食べたら忘れられない味でしたよ。
※別の取材時に撮影
メインは魚料理職人が種類・個体差を見極め手作りで仕上げた鮮熟干物です。瀬戸内海の海塩と季節の柑橘類で作ったオリジナル漬け汁に漬けこみ、熟成処理した干物なんだそうです。
様々なタイプの木桶醤油の中から選んで、たまごかけごはんもいただけるなんて、もう至れり尽くせりの朝ごはんになりそう。
朝ごはんには、ごはんのおとも(自家製+各地厳選お取り寄せ)が並びます。宿主である株式会社OIKAZさんが趣味で集めたという多種多様な豆皿を選んで、自分だけの朝ごはん膳を作ってみてください。
いやもう、これほどの宿を旅行者だけに使ってもらうのは勿体ない。
例えば育児中のママさんなんて、たまには子どもから解放されたいはず。旅行だと大変だけど近くの宿にひと晩泊るだけなら優しい旦那さんが子どもの面倒を見てくれるかもしれません。例えば忙しいビジネスマンなら、仕事が終わって軽く一杯ひっかけた後、木樽の浴槽に浸って翌朝は健康的な朝ごはん…なんていう楽しみ方もアリだと思います。
日常の中のちょっとした非日常が味わえ、こころが凪ぐ、癒しの宿です。
事業主の株式会社OIKAZEさんと設計監理の株式会社しわく堂さん。
予約等は準備が整い次第、予約サイトを公開するそうです。気になる方はInstagram(@nagi_busshozan)をご確認ください。
施設名称:凪(なぎ)
所在地:香川県高松市仏生山町甲463
宿泊料:基本料金13,500円~
駐車場:周辺にあり
事業主:株式会社OIKAZE
設計監理:株式会社しわく堂