津田の松原まで海岸線に沿って伸びる「津田ふるさと海岸」から1本入った路地裏。センス良く古民家を改装した「うみの図書館」の佇まいは、どこか時間の進みがゆっくりと感じる風情があります。
引き戸をガラガラと開けて建物に入ると、愛らしいイラストが描かれた看板が目に留まります。
ふと見ると、地元の小学生たちが作ったというしおり箱や、ちょっとしたことをお願いしたい掲示板などもあって、人肌を感じる空気にいきなりほっこりとなります。
上がりかまちに戸惑っていると、同館を運営する株式会社ゲンナイの代表・黒川さんが「靴は履いたままでどうぞ!」と優しく声をかけていただき、そーっと館内にお邪魔することにしました。
「いつもよりほんの少しだけ穏やかで心休まる1日」を過ごす小さな図書館
元々は遠洋漁業の船長が事務所兼自宅として使っていた築約60年の古民家を改装したという図書館には、「海にまつわる本」と「漂流文庫」の2種類に分けられた約3,400冊の本が所蔵されています。
「海にまつわる本」のコーナーには、海辺が舞台の小説や絵本など海に関係する本が並んでいます。
ざっと所蔵されている本を見ましたが、海に関する本だけでもこんなにあるのかと感心。絵本や図鑑から小説に至るまで、あらゆる世代がどっぷりと本に浸れるラインナップです。
てか、個人的には「海辺のカフカ」なんてめっちゃ懐かしい。あらすじもうろ覚えになってきたので、またじっくりと読んでみたい…。
そして「漂流文庫」のコーナーにも本がびっしり。
地域内外から寄贈され、この地に流れ着いてきた本の様を「漂流」と呼ぶセンスの良さ。寄贈された本なので、こちらの意図とは関係なく様々なジャンルの本が流れ着いてきます。スマホのアプリを開くとおすすめの本が出てくる現在の環境とは真逆の、ひょんな出会いがあるのも楽しいところです。
少し眺めただけでも思いもよらない本のタイトルに心が引かれたりして、なんだか斜め後方から好奇心がやってくるような面白い感覚でした。
うみの図書館では宿泊客にも気軽に本が借りられるよう、ひとり5冊まで、最長2年間の貸し出し期間を設けているそう。また、返却も東京や富山など全国の連携拠点で可能とのこと。
貸し出しカードには貸出日や貸出先ならぬ「漂流日」や「漂流先」が書かれてあり、本がこれまでどんな漂流を辿ってきたのかが分かる仕組み。こういう演出もなんだか和みますよね。
本とともに過ごすカフェに宿泊施設。すぐそばの海辺で読むのも心地よい。
喉が渇いたので、この4月にオープンしたというカフェスペースにもお邪魔しました。
こちらにもたくさんの本が置かれていて、コーヒーや紅茶を飲みながらゆっくり本に浸れることができます。活字に没入すると気づかないうちに疲れ目になったりするので、ここではライトに雑誌などパラパラめくるのもいいかも。
同行してくれた吉田春乃さんは、なんだかおもしろいものを見つけたようで、何度もパラパラめくってはしゃいでいました(笑)
オリジナルのしおりやポストカードなども販売されていて、思い出にひとつ購入されてもいいかも。
せっかくなので、宿泊できるお部屋も見せていただきました。
宿泊は離れになっているのかな… 和の趣を感じる中庭を眺めながら廊下を進むと、
1人用、2人用、4人用とそれぞれ定員が設定された3つの客室に繋がる廊下に出ました。
面白いのが部屋の番号。よくある101、102、103… ではなく図書館の十進分類法の数字を組み合わせた部屋番号になっている点です。
例えば4名定員の489号室なら(4)自然科学、(8)言語、(9)文学といった具合で、部屋にはさりげなく分類に合わせた本が備えられているのだとか。
その4名定員の489号室。広々としていて、ベッドや縁側に設置された机でゆっくり読書ができそう。
そしてこちらは2名定員の257号室。外からの光が柔らかくて、中庭を眺めながら過ごすのもいいかも。
そして、世の中のすべてのしがらみを忘れて過ごしたいなら1名定員の136号室に限る!
ドアを開けた瞬間「狭っ!」と思ったんだけど、この押し入れの中感というか穴蔵感というか、こういう薄暗くて狭い空間って案外落ち着くんですよね。もう没入感がハンパない!
あちこち観光地を巡る旅行もいいけど、忙しい仕事が続いた後などは心地よい静寂に包まれながら、その時の感性が反応した本を読みながらゆったり過ごす休日も案外いいかも。実際、そんな利用をされる人がとても多いそうです。
とは言え、いきなり宿泊となると敷居が高いかもしれないので、カフェに立ち寄るような気軽な気持ちで「うみの図書館」を利用してみてもいいですね。
実は休館日と知らずに取材アポをしてしまった関係でこの日はいらっしゃらなかったのですが、いつもは本に精通している館長さんがおすすめの本などをアドバイスしてくれるそうなので、たくさんありすぎて迷う人はちょこっと相談してもいいかもしれません。
「うみの図書館」は、本だけでなく人までも漂着してしまう、そんな心地よい図書館でした。
代表の黒川さんと。
ちなみに、すぐそばの海岸で潮風とともに読書を楽しむ人も多いと聞いて向かってみたのですが…
さすがにこの時期は暑かった(笑)
おしまい。
◆宿泊のご予約は公式webサイトからどうぞ!
⇒ うみの図書館
モデル = 吉田春乃 / Twitter @HarunoYoshida
施設名 | うみの図書館 |
所在地 | さぬき市津田町津田1418 |
連絡先 | uminotoshokan@gmail.com |
営業時間 | 13:00~19:00 【宿泊】 チェックイン 16:00~19:00 チェックアウト 10:00 |
休業日 | 火・水曜日 |
駐車場 | あり |