地方移住や田舎暮らしがひとつのムーブメントとなる中、最近では生活環境や風習が一変する田舎ではなく、ほど良く都会である地方都市に住み、都市の利便性と田舎の豊かな自然とをバランス良く楽しむスタイルも注目されていると聞きます。
関西出身の僕からすれば高松なんてまさに打ってつけの移住先だと常々思っているのですが、今回たまたま埼玉から移住してきたというご夫婦と知り合ったので、そこいらのところをじっくりお聞きしたいと思います。
この2月に高松市内に越してきた竹内さんご夫妻です。
実は僕がちょくちょくお邪魔しているコワーキングスペース「Setouchi-i-Base」で、奥さんの瑠美さんがこの4月からコーディネーターをされています。初めてお会いした時に、なんかオシャレで都会の人の匂いを感じてたところ「最近埼玉から移住してきました!」ということだったので、半ば強引に今回のインタビューと相成った次第です。
当日になってご主人さんも時間を取っていただける事になりましたので、以下、ご主人さんを竹内さん、奥さんを瑠美さんと呼ばせていただきます。
海が見える家に住むのが夢だったけど、実は香川は候補に入ってなかった。
ーーそもそも地方に移住しようと思ったきっかけは?
竹内さん「元々は東京の会社に勤めていて恵比寿や渋谷に住んでいたのですが、都会の人の多さやごみごみとした環境があまり好きではありませんでした。それで、独立してフリーランスになった時に都内は家賃も高いこともあって埼玉に引っ越したのですが、約5年埼玉に住んでみて、ほぼ在宅リモートで仕事ができてしまう事に気づいたんですね。妻には田舎暮らしや海の見える家に住みたいという夢がずっとあって、それなら地方に移住するのもありかなと思うようになりました。」
ーーそこから具体的に移住先を探されることとなったわけですが、海沿いの田舎といっても日本中どこにでもそんな場所はありそうですね(笑)
瑠美さん「まず2人とも寒いのが苦手で雪の積もるところは避けたかったので、その時点で関東から北は候補から外れました。そのうえで、太平洋側は南海トラフ巨大地震が心配、日本海側はなんとなく海が荒々しいイメージ…。そんなことを考えていたら瀬戸内海沿岸がいいのでは? と候補が絞れてきました。」
竹内さん「妻が田舎暮らしをしたいというのは聞いていたのですが、よくよく聞くと『やっぱ近くにイオンはほしいよね』って、それ田舎じゃないじゃん! みたいな(笑)。根っからの江戸っ子なので、そもそも田舎の概念がそこそこ街だったという笑い話です。」
瑠美さん「都会か田舎かじゃなくて、自分の生活に最低限なにが必要なのかをあらためて考える良いきっかけになりましたね。私の場合は海の近くに住みたいというのがあって、ペーパードライバーなので追々車は運転できるようになりたいとしても、当初は徒歩圏内に買い物や外食できるお店はほしい。田舎に住みたいと思い込んでいたけど、よくよく考えたらほど良く都会がいいと分かって、当初は福岡、山口、岡山、兵庫が候補に挙がって実際に下見にも行きました。」
ーー香川はまったく候補に挙がってなかったんですね(笑)
瑠美さん「ほんと、まったく想像してなかったです(笑)。 下見旅行で岡山に行ったときに、次は兵庫で宿も取っていたのですが、そのタイミングで行こうとしてたエリアでちょっと悪い噂を聞いて、どうしよう… となった時にせっかくだから香川に行ってみようと。で、高松駅周辺をレンタサイクルで回ってみたら『えっ、ここいい~っ!』って一目ぼれでした。」
竹内さん「高松駅を降りた瞬間から都会だなと思いました。新しくて綺麗、高いビルがどーんと目について、振り返ると駅舎がかわいい(笑)。海は遠いのかなと思ったら駅のすぐそばだし、都市公園として綺麗に整備されてる。そのくせ人が少なくて、なんだこの違和感は? と思うぐらいでした。自然と街がうまく調和されているなと。」
瑠美さん「岡山も海はあるのですが、街から遠くてちょっと田舎になっちゃうんですよね。」
イメージとしては横浜や神戸のような港町なのですが、そういった街は人口も多いからごみごみしている。高松は横浜や神戸に比べるとコンパクトですが、人が少ないのでどこもゆったりとしているから住みやすそうだと感じたそうです。
瑠美さん「東京だとちょっとオシャレなカフェなんかは予約が取れないし、予約取れても90分で追い出されます(笑)。高松のお店はそれがなくて驚きました。」
竹内さん「他にもいろいろ候補の都市はあったのですが、妻と二人で『もうここで決定だね』って。その日はあまり時間がなくて第一印象だけだったのですが、後日じっくり高松に再訪してますますここに住みたいと思いました。」
ーー東日本と西日本では言葉や文化の違う部分が多いと思いますが、そのあたりの不安はありませんでしたか?
瑠美さん「それはあまりなかったですね。」
竹内さん「これを言うと怒られるかもしれませんが、実は関西弁のきつい(そう聞こえる?)話し方が苦手で…」
まじかっ! さっきから変な関西弁で話してて申し訳ない(笑)
竹内さん「でも実際に香川の人と話してみるとイントネーションは関西に近いけどすごく穏やかで優しく聞こえるのでほっとしました(笑)。西日本が怖いというより関東から離れたことがなかったので、東京からの距離に不安がありました。なにが不安なのか具体的には分からないですけど、遠くなるという漠然とした不安でしょうか。でも、これも二回目に高松に来たときは東京から飛行機を利用したのですが、実質飛んでる時間は40分とかそんな感じだったので、いやいやぜんぜん近いぞと。現実的な距離はあっても精神的な距離は案外近いことが分かったのでこれも不安はなくなりました。」
瑠美さん「私はむしろ遠い方がいいと思ってて。というのも車を運転するようになりたいという欲があって、関東だと駐車場代が高くてそもそも車を持てないし、持ったとしても車で出かけるイメージもないので、そういう意味でも関東から離れたいと思っていました。実際に高松に住んでみて少しずつ運転の練習もしているのですが、もう車で行きたいところだらけですね(笑)」
香川県民は車のマナーが悪い人が多いのでどうぞ気を付けてください(笑)
高松の生活は想像以上に充実!毎日海を眺めて暮らしています。
ーー2月に移住してきて4か月目ですが、実際に暮らしてみてどうですか? 思っていたのと違うみたいなことはありませんでしたか?
竹内さん「今のところ想像どおりか、それ以上ですね。毎日海を見て、(タイミング良くボラが水面から飛び跳ねる)今魚が跳ねましたが、ああいったのを見て感動して…。生活面も実は埼玉にいた頃よりも便利になっています。埼玉でも東京に近い場所だったのですが、(それでも電車に乗らないと行けない場所もあった一方で、高松では)生活するうえで東京にあるものはほとんど揃ってますし、街がコンパクトだから生活圏内にすべてがある。」
東京や大阪は意外と住んでみると不便だったりするんですよね。病院が近くになかったり、あってもいつも混雑している。スーパーもこぢんまりとした高級なものしかなかったり、何をするのも並ぶのがマスト。僕も関西から高松に引っ越した時に、車の渋滞がほぼないことに感動しましたしね。都会は他人のせいで自分の時間が削られる感覚がすごくありました。
瑠美さん「なんだか贅沢の定義が変わったような気がします。東京にいた頃は高級なものが贅沢というか価値があったのですが、ここでは空間を広く使えるという贅沢や、景色の雄大さなんかのお金で買えない価値みたいなものを感じます。高松シンボルタワーの8階だったかにオープンデッキ(屋上広場)があって、そこが好きでよく行くのですがほとんど人がいない。あんなところが東京にあったらいつも人が混んでてゆっくりできないですよ~!(笑)。そこでゆっくり景色を眺めたり、お菓子を食べたりして過ごす贅沢… こんなの普通はないよなぁ~としみじみと幸せを噛みしめています。」
竹内さん夫婦がお気に入りの高松シンボルタワー8階屋上広場。ここから徒歩10分のマンションに住んでいるそうです。
ーーお仕事の面ではどうですか? 埼玉にお住いの頃からのお付き合いで東京の会社から仕事をいただいているそうですが。
竹内さん「リモートなのでそう変わらないですよね。埼玉にいた頃も出社はしませんでしたし、それができる仕事を選んでましたので。地方へ移住となると仕事はどうするのかみたいな事が大きな問題になるかと思いますが、そういう意味ではリモートで完結できる私たちの仕事は恵まれているなと思います。」
ーーいやらしい話しで恐縮ですが、生活にかかるお金は埼玉時代と比較していかがですか?
瑠美さん「(高松市は)国保が高いですよね。あと、水道代がちょっと上がったっぽいですね。食料品などの物価は平均するとそう変わらないかな…。でも、家賃はかなり安いイメージです。うちは高松駅から近い物件なので駐車場代を入れると埼玉の頃とあまり変わらないのですが、この立地ですからね、東京だととてもこんな物件には住めません(笑)」
ちなみに移住とともに転職するという想定で、東京と香川の賃金格差に対して生活コストはどうかと肌感覚で答えていただくと、高松の郊外に住めば住居費がかなり抑えられるので、生活水準としては賃金格差分はペイできるのでは? とのことでした。なにせ東京の家賃はやばい! と声をそろえて言われてました。
仕事自体は特殊なもの(都会でしかできない職業)を除けば何かしらあるので、そういった部分でも高松は比較的移住しやすい街かなと思います。
ーー人付き合いの面ではいかがですか? 高松の人はめんどくさくないですか?(笑)
竹内さん「私は人付き合いが苦手なのですが妻はうまくやっているみたいです(笑)。せっかく高松に移住したのだから、いろんな人と繋がって、自分たちの世界も広げていければなと思っています。」
フリーランスということもあって割と時間は自由に使えるそう。夕方になるとご夫婦でよくサンポートあたりを散策して、海をぼーっと眺めたりしているそうです。
瑠美さんのお友達からは「地方って人付き合いが大変そう」と心配されたそうですが、高松は元々支店経済の都市ということもあって2~3年しか住まない転勤族が多い街です。僕の肌感でも高松の人はよそから来た人に慣れていてわりと寛容な印象ですので、良い意味で上辺だけの付き合いでも十分やっていける土地柄です。
竹内さんもおっしゃっていましたが、都会か田舎かみたいなゼロヒャク思考じゃなくて、田舎と都会のいいとこ取りのような地方都市に住むのもアリだと思いますし、どこかの行政主導の移住支援みたいに永住前提で考える必要もないと思います。
最初は試しにほんの数年住んでみようぐらいの感覚で都会から高松に住んでみるのも案外楽しいかもしれません。
僕も最初はほんの数年住むつもりだったんですけどね…、気が付けばもう17年住んでしまっています(笑)
高松移住に興味のある方は、瑠美さんがnoteやYouTubeなどで体験談をまとめてくれています。すごく参考になるのでぜひのぞいてみてください!
⇒ Setouchi Note(YouTube)
⇒ Setouchi Note(note)
⇒ 瀬戸内ノート/香川の移住記録(Instagram)