※一部昭和的な表現があります。ご注意ください。
ある日のこと、魚肉ソーセージをかじりながらメールをチェックしていると、とあるプレスリリースが目に留まりました。
いわく、
香川発!デュエット歌謡の新定番。
曲はバリバリの昭和歌謡で、私とボーカロイドとのデュエット曲です。
歌詞はおじさんのメルヘンで… 口説き上手だね、なんて言ってもらったことあります?
そして添付されていた資料画像を開いてみると…
いやもう、あやしいにもほどがある!
しかも、これを作った人は地元の青壮年会の会長をしていて、数年後に定年を迎えるおじさんだという…
地域発のコンテンツを作って地元を盛り上げたいと言うものの、このいかがわしい二重瞼からは不適切な方向へ進んでしまう未来しか見えない…
これ、絶対アナーキーなやつやん!
一瞬見なかったことにしようと思ったのですが、先日、ワンレンボディコン崩れの美魔女から「最近のガーカガワはキレイすぎてつまらないわね」と冷コー飲みながらチクリと言われたばかりなので、意を決して取材の申し入れをしたのでした。
ただの女と男に還る 夜のコンプライアンス
ということで、とある喫茶店で待ち合わせすることになったのですが、まずは読者の皆さんに「黒川幸司とそのグループ」による昭和ムード歌謡曲「夜のコンプライアンス」を聴いてもらって心の準備をしていただきたいと思います。
なお、おじさんとボカロのデュエットにナウいと感じた方は、動画の概要欄に配信ストアのURLも記載されているのでお好きにどうぞ。
あかん、このサビの部分が脳の海馬を侵食してくる…
そして待ち合わせ場所に現れたのは定年前にしてはかなり若く見えるおじさん。ヤバい人ならソッコーで逃げるつもりであえて喫茶店の中ではなく外で待っていたのですが、とりあえずごく普通の紳士のようでひと安心しました。
黒川さん「こんな遅い時間ですみません、実は普通のサラリーマンなもので(笑)」
いやでも、確かにあの写真の人物で間違いない。あんなにいかがわしい二重瞼はそうそうないので、しっかり記憶に焼き付いております。
ーーあの白黒の顔写真がインパクトありすぎてアブナイ人が来たらどうしようかと思ってました(笑)
黒川さん「あれですね、実は仕事の帰りに車止めて自撮りしたものです。チラシも印刷してるんでどうぞお持ち帰りください(笑)」
チラシまであるんかいっ! どんだけ自分推しやねん!!
令和の夜に、昭和の風が吹く…
黒川さん「こちらにも書いているんですが、最近は誰もが知っていて楽しく歌えるデュエット曲がないなと思って作りました。イメージとしては『別れても好きな人』のような曲でしょうか、紅白で演奏しても恥ずかしくないクオリティーを目指しました。」
いきなり紅白ときたか!
でも歌詞を見ると、「気づいていたよ 悲しく笑う癖」や「なのになぜ今なの 火をつける悪い人」など、昭和の頃の紅白で歌われた曲っぽいフレーズが耳当たり良く並びます。
黒川さん「インパクトのあるタイトルや詞、すぐに覚えられて何回も聴きたくなるメロディを心がけて作りました。よくある昭和歌謡風のパロディではなく、昭和の時代にそのまま流れていても違和感のないものを。それと、曲は昭和歌謡そのものですが、それに最新AI技術を使ったボカロ、『コンプライアンス』という昭和の時代には無かった言葉を組み合わせることで、今しか作れない曲を作りたかったんです。」
チラシはふざけてるのに曲はガチなやつやん! 恐れ入りました。
ーーところで何故にコンプライアンスなんですか?
黒川さん「歌謡曲は世相を映す鏡なので、男女の間柄でもコンプライアンスが気にかかる現代の世相を反映しました。このタイトルで出すなら今しかない、きっと阿久悠さんや なかにし礼さんが生きておられたらとっくに題材にしているだろうと。」
黒川さん「ただ、地元のおじさん達に聞いてもらったら『全然エロさが足りん!』とのご指摘が(泣)… いやいや、これ以上やって紅白出られなくなるといけないので…」
本気で紅白ねらってんのかいっ!
ーーグループなのに人間はひとり!? というのもいいですね。響き合う、人と機械のランデヴーというオヤジ感もいいです(笑)
黒川さん「これは、ボーカロイドの一種で Synthesizer V という歌声合成ソフト『桜乃そら』さんの声を曲に合わせて調整して、私が歌ったものとミックスしています。ミキシングにしても、昔は個人では難しかったことを AI が支援してくれるようになって、おじさんの可能性(笑)は広がりました。ただ、仕事が終わってからなので、寝不足でマウスがカクッとなりながら半年かかりましたけど(泣)」
このボカロ「桜乃そら」さんの声もすごく曲にマッチしてますよね。ほど良い色っぽさがあります。
ーー聞くところによるとカラオケ店などでも歌えるそうですね。すごっ!
黒川さん「はい、全国のJOYSOUNDで歌えます。意外とハードルが低くてびっくりしました。TuneCoreのような配信代行サービスのおかげもあって誰でも世界中の配信ストアから自分の曲を配信できる、すごい時代になりましたね。」
ーーところで青壮年の活動の中での会話から地域発のコンテンツを作って地元を盛り上げたいというのがそもそもの始まりとプレスリリースに書かれていたのですが… 曲の中には地域性はまったくないですよね?(笑)
黒川さん「もし、地元の地名が入った当たり障りのない曲を作ったとして、ガーカガワさんは取材に来てくれたでしょうか? 地方コンテンツって、皆にいい顔して尖ったものを作りにくい。そして広がらずに埋もれて終わるパターンが多いんです。でも1人でもそれを突破する人がいれば、後に続く人は出てくる… 無謀な挑戦ですが。」
ーーこれはまんまとやられた! あのチラシや「夜のコンプライアンス」というタイトルも戦略なんですね。ガーカガワ的にもインパクトは大事です(笑)
黒川さん「実はこのファーストシングルは名刺代わり。次回作は高松市の歓楽街・古馬場をテーマにしたご当地ソング『古馬場トワイライト』をリリース予定です。イメージとしては『星降る街角』のようなみんなで盛り上がれるアップテンポの曲なので、ここからまさに地域が盛り上がるきっかけをと考えてます。」
ここで終わりじゃなくリリースプランはテレサ・テンの「つぐない」、紅白出場した「愛人」、そして今でも歌い継がれる名曲「時の流れに身をまかせ」の3連リリースを参考にしているそうです。ということは、まだまだ先に続くプランがある?
最初は不安だらけの取材だったのですが、話をお聞きするうちに、一見シュールだけど刺さる人には刺さる。なによりやっているご本人がすごく嬉しそうで楽しそうです。
こんな、自ら率先して盛り上がる地域の盛り上げ方もあっていいんじゃないかなと思いました。誰かがやってくれるだろうでは決して地域は盛り上がりませんからね。
なお、嬉しさのあまり、思わずひとりカラオケに行った模様(笑)
取材前に何度も聴いたのでYouTubeのマイミックスリストになぜか入ってしまって、実はその後作業中BGMの中の曲として「夜のコンプライアンス」が流れてきます。その後に流れてくるミセスのインフェルノとのギャップがまたバッチグーなんですけどね(笑)
でも不思議と毎日強制的に流れて来ても不快じゃない。いや、むしろつい一緒に「夜のコンプライアンス~♪」と口ずさんでいる自分がいます。どんだけパワーワードやねん!
もしかしたら、地味にヒットしていくような予感??
いや、でもやっぱりこの二重瞼はいかがわしい!(笑)
※本項の画像はすべて黒川幸司さんからのご提供です。