観音寺市の旧市街地。駅から歩いて15分ほどの路地裏にある隠れ家のようなお店「秀楽」。そのお店に看板はありません。
赤い暖簾がはためいているだけで、入り口もすりガラスになっていて中も見えない。一見、入りづらそう。そもそも見つけられるのか。
でも、そこに癒しを求めて様々な人たちが集う素敵なお店なのです。
扉を開けると赤い絨毯がひかれた小上がりのカウンター。その中から、ショートカットで和服姿の女将さんが笑顔で出迎えてくれます。
席数は8席程度の小さなお店。お客さん同士も自然と仲良くなれる広さですね。
早い時間にお邪魔したので、お客は筆者一人。いつも通りハイボールを注文。そしてお料理はお任せです。
割烹の経験が活きたワンランク上の小料理
お通しは「ママカリ南蛮漬け」。
お酒のアテにも、ご飯のお供にもなる優しい酸味が身の中にしっかり染み込んでいます。これだけでエンドレスにいけるかも…
そうこうしているうちに最初のお料理「秋鮭の幽庵焼き」が出てきました。
パサっとなりがちな秋鮭がふっくらと仕上がっていてこちらも美味しい。変に角々しくない幽庵地も素敵ですね。
お次は「豚バラ肉のネギ巻きフライ」。こちらは老若男女、様々なお客様に人気のメニューなんだとか。
生ワサビのある時は擦りおろしてくれるらしく、この日も運良く生ワサビをいただけました。
※撮影用にカウンターに出していただいてます。普段は女将さんが擦りおろしたものが提供されます。
そして女将さんにも撮影協力いただき、あ〜んショットを(笑)。
曰く、「彼女があ〜んを強要してくる」に使っていいよ。とのことでした。
さて、次は秀楽の一押しだそうです。「銭形揚げ」
地元で上がる地魚のみを使った蒲鉾屋さん「仁加屋」のすり身を、観音寺の老舗えびせん屋「あいむす焼き」のえびせんで挟んで揚げた逸品。天麩羅の衣・せんべいのサクッと二重奏の内側から、プリッと弾力のあるすり身があらわれ、旨みが溢れて来ます。
先に紹介した三品とは異なり、特別な手間隙をかけているわけではないのにめちゃくちゃ旨い!
素材の掛け合わせだけでこれだけ旨くのが驚きです。もちろん、女将さんの丁寧な調理があってこそなのでしょうが。
どれも丁寧で美味しいお料理。その理由をお聞きしたところ、もともと商売家系で旅館や割烹を営まれていた時もあるのだそうです。
若い頃から女将として携わり、様々な職人さんから伝授された料理を丁寧に仕込む。凡事徹底をすることで、こんなに美味しいお料理が出来上がるのですね。
そんな話をしているうちにお客様が一人、また一人と来店され忙しくなって来ました。
お一人で営業されていることもあって、ドリンク・フードの提供で忙しくされている時もあるようです。
女将さんのペースに合わせて楽しむ。そんな心意気が必要なお店ですね。だから、良いお客様が多いのですかね。
80年、カウンターから人・街を見続けてきた女将が心の棘を抜いてくれる
秀楽の女将さんは御年79歳。戦後に生まれ、商売人の子として育ち家業をつぎ、カウンターの内側からずっと観音寺に携わる人々を見て来たのだとか。
その歴史の中で、様々な人間模様や時代の移り変わりを見て来たのでしょうね。
その懐の深さからか、秀楽にも様々な人たちが女将さん目当てに来店されているように見えました。
聞けば誰でも知っているような大きな会社の上役さん、女将さんの昔からの同級生、息子世代の方々や本当に若い人たちまで。年齢性別関係なく来店さられるようです。
そして、普段なら交わらない人々が、カウンターを通じて女将さん越しに繋がっていくのですね。お互いの価値観を尊重しながら、女将さんも含めてみんなが居心地よくなれる空間。
秀楽は、そのような場所なんだと感じました。
そんな素敵な夜に、いい気分で酔っ払った筆者。腹パンなのに酔うと口寂しくなり、もう一品だけお願いしたところ、ハイボール似合う抜群のアテが出てきました。
「スモークチーズとスモーク卵」
いうまでもなくめちゃくちゃ旨い。そして、また杯を重ねる… 今日の取材はこれにて終了したのはいうまでもありませんね。
女将さん世代の方々から、30代や20代までもが集う「秀楽」。素敵なお店でした。
でも、オススメして忙しくなっちゃうのが寂しくも感じる、まさに隠れ家のようなお店でした。
店名 | 秀楽 |
所在地 | 観音寺市観音寺町甲2898 |
電話番号 | 090-1573-6321 |
営業時間 | 17:30~23:00 |
休業日 | 木曜日 |
駐車場 | あり |